Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「何だよ、風邪か?うつすなよ」


「いや、風邪じゃないと思うケド…もっと心配の言葉はねぇのかよ?」


「男に掛ける優しい言葉なんてねぇ!!」


そんなズバッと言い切るなよ。


う゛~それにしても寒みぃ。こいつなんでこんなところで平気で作業してんだよ。


「風邪じゃなきゃなんなわけ?元気ないじゃん。珍しくメガネだし。ちっ。俺とお揃じゃん」


裕二は作業を進める手を休めることなく聞いてきた。


「お揃??キモっ!って、そんなことどーでもいいや。…ちょっと寝不足?お前こそ何でそんなに苛々してんだよ。また綾子と喧嘩かぁ??」


聞いて、はっ!となった。


そー言えば、綾子の不審行動について忠告しにくるつもりだったんだ。


でも……


何かめんどくさくなってきた。正直、今の俺はそれどころじゃねぇじゃん。


「俺も…寝不足」


裕二はふぁっと大きな欠伸をしてメガネを外し、目をこすった。


「何だよ。綾子とがんばり過ぎたか?」


言ってて気持ち悪くなった。


想像したかねぇな。しないけど。


「違げぇよ」


裕二はぶっきらぼうに一言呟いた。その横顔に疲労が滲み出てる。


や……やっぱ、こいつも何か綾子の不審行動に気付いてるんじゃ…


だけど裕二は






「なぁ。お前、今…さ、昔の女が現われたらどうする?」







と唐突に振り返り、俺の中心で渦巻いている問題に、なんなく入り込んできやがった。





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