Fahrenheit -華氏- Ⅱ
俺が知ってる真咲は、たとえ誰かに強い恨みを抱こうと、その人間に傷を負わせる女じゃない。
頭のいい女だから、恨みを履き違えるとも思えない。
だけど、俺の中で不安は拭い去れない。
得体の知れない恐怖が足元を這い上がってきそうで、俺は身震いをした。
それはこの部屋の寒さからなのか。
それとも違う何かなのか―――
「何だよ、震えちまって♪寒いのか?可愛い奴め。俺があっためてやるよ」
と裕二の腕が俺の肩に伸びてきた。
ぞぞっ!
違う意味で俺は震え上がった。
「俺に触ンじゃねぇ!」そう怒鳴って勢いよく立ち上がると、
「だははははははっ!!」と裕二は豪快に笑った。
「やっぱお前をからかうとおもしれぇ。ちょっと元気出たぜ♪」
涙目になりながらも腹を抱え、裕二は俺を見上げてきた。
あっそ
俺は余計寒くなった。ってか悪寒??
そう言えば頭痛もするし…
ま
裕二の気持ち悪い行動のせいだろうな。
結局俺は綾子のことを言い出せずに、サーバールームを後にした。