Fahrenheit -華氏- Ⅱ
でも浮気じゃなかったんだな。
こそこそ怪しい行動しやがって。
俺は自分の取り越し苦労だったことに気付き、ちょっと恥ずかしくもあり、そしてそれと同じぐらいあいつに怒りを覚えた。
“バカ”呼ばわりするなよなっ。まぁ瑠華と綾子がそんなに親しかったことに、全然気付かなかったけれどぉ。
俺は瑠華に向き直ると、改めて彼女をぎゅっと抱きしめた。
「ぎゅ~」
腕の中に居る瑠華は、夢ではなく本物で、俺はその感触を確かめるように力を入れた。
華奢な彼女の体が壊れそうになるぐらい抱きしめたかった。
「ぎゅー」彼女の相変わらず淡々とした声を聞いて、俺は無性に安心できた。
「啓……熱い…」
と、言う冷たい言葉までがリアルだ。
瑠華だ!!間違いないっ。
って、冷たくされて現実だと思う俺どーよ!
「俺体温高いもん♪瑠華が冷めてるから丁度いいんじゃない?」
それでもめげない俺は瑠華を離さなかった。
だけど俺の胸を瑠華が押し返す。と言っても体格の差もあるし、男女の差もあるから彼女の力なんて全然大したもんじゃないけれど。
「そうじゃなくって。熱、ありますよね?」
瑠華がちょっと咎めるように眉を吊り上げると、俺を睨みあげて来た。