Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「や…俺いつも風邪引いて熱出すとわざと熱い湯に長く入るんだ。そしたら汗と一緒に熱も体外に出て行くから」
俺の説明を瑠華は目を細めて聞いていた。
こっわーーー!
「分かりました。でも今のままじゃ危ないです。ちょっと休んでからにしてください」
納得したのか、そう頷くと瑠華は俺の肩を軽く押し戻し、ベッドに横たえた。
その上からやっぱり瑠華は俺を覗き込んでくる。
相変わらず無表情だったけど…
可愛い♪
キュンっと胸がしめつけられる思いをしていると、
「顔赤いですね。辛そう」と瑠華が心配そうに眉を寄せている。
や。顔が赤いのは熱のせいじゃなく…
そんなことを思っていると、瑠華は俺の顔からメガネを外した。
「メガネ無いと何にも見えないデスよ」
「たまにはいいんじゃないですか?」とのんびり言って、瑠華がちょっと笑った―――ように見えた。
視界の端に柔らかい微笑が見えて、その後に彼女の柔らかい口付けが俺の唇に降りてくる。
びっくりしたけれど、
嬉しかった。
たった五日しか離れていないって言うのに
その唇の感触が妙に懐かしくて
とても安心できた。
瑠華の口付けはやっぱりフルーツのような甘さをほのかに香らせていて、
優しい感触がした。