Fahrenheit -華氏- Ⅱ
何もかも忘れたかった。
瑠華の過去―――
ヴァレンタインと会っていたんじゃないか、という不安。
11日の約束。
そして俺の過去―――
真咲の出現。
目まぐるしく回る不安と、得たいの知れない恐怖が迫っていることを―――
いっとき
忘れたかった。
でも
忘れることなんてできない。
熱に浮かされるように恋に溺れ、
体外から出される欲望の果てのように
すべてを追い出したかった。