Fahrenheit -華氏- Ⅱ




ドキリ…


心臓がいやな音を立てて跳ね上がる。




だけどそのすぐ横に置かれた小さなメモ用紙が見て俺は目を開いた。




Reserved seat




綺麗な筆記体の英語。


意味は





―――“予約席”





俺はリボンをほどいて恐る恐るその箱を開けた。


中にホワイトゴールドのリングが入っている。





アトラスのオープンリングだった。





ニューヨークのティファニー本店には、 大きなオブジェが設置されている。


そのオブジェは、ギリシャ神話の「アトラス」。背中に巨大な時計を抱えている。


その大時計に刻まれたローマ数字をモチーフとして生み出されたのが、アトラス コレクションだ。




見覚えのあるそのデザインは―――真咲にプレゼントしたものとよく似ている。


でも俺があげたのはシルバーの台座にローマ数字が乗っているタイプのもの。


これは数字を彫ってあって透けて見える。


俺が真咲にあげたものより何ランクも上で高価なものに違いなかった。




瑠華がこれを選んだのは恐らく偶然だろう。


ティファニーって言えばアトラスだ。


そんな概念があるからたまたま重なったに違いない―――




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