Fahrenheit -華氏- Ⅱ
ティファニーのアトラスなんて、見るだけで苦い思いが蘇ると思いきや、瑠華が書いた
Reserved seatの文字を見ると、違った意味で緊張する。
ドキドキした面持ちで、リングをそっと取り出す。
ど、どうしよぅ……
これはいわゆるペアリングってやつですか…?
でもでもっ!ざっと見積もって15万するリングだぞ?
それを女からって!
かっこよすぎだろ!!瑠華っ!
なんて考えてると、廊下の向こうから「フフっ」と意味深に笑う声が聞こえてきた。
その声がする方を振り向くと、壁から顔だけを覗かせた瑠華がこちらの様子を伺っていた。
って言うか、何で普通に出てこないのよ!
って言うかいつからいたのヨ。
「って言うか、どこに行ってたのヨ!」
「買い物に。これなんかどうかと思いまして」
と言って瑠華は小さなビニール袋をがさがささせて、中からポカリのペットボトルを取り出した。
「啓の行動はやっぱりおもしろいですね。見てて飽きない」
瑠華は楽しそうに言うと、俺の前まで歩いてきた。
ジーンズにラフなカットソーを着ている。
「はい。ポカリスエット」
「ど、どーも…じゃ、ねぇ。これは!?どーゆうこと!?」
俺は瑠華の両肩を掴んで、リングを目の前にかざした。