Fahrenheit -華氏- Ⅱ


熱も引いてすっかり元気を取り戻した俺はスーツを着終わると


「ふっかーつ!!」と言って、ベッドの上でガッツポーズ。


その様子を見ていた瑠華が「え?」と小さく声を上げ、驚きの表情を作った。


「何?俺、何か変なこと言った?」


「いえ…」と言いながらも瑠華は何がおもしろいのか、ちょっとだけ笑みを浮かべていた。


「本当、啓と心音って似てるなって思いまして」


「え?心音ちゃん??何で?」


「言動が同じ。啓の方が子供っぽいですけどね」


なぬ!子供っぽいだとぅ。


ムッときたが、今の俺は超ご機嫌。


だってだって今日から瑠華ちゃんと居られるもんね~


おまけに彼女は休暇がまだ残ってるのにも関わらず、会社に出社するらしい。


「今日からまた一緒に仕事だね」


なんて俺は自分なりにかっこつけて、瑠華の耳元で囁いてさりげなく彼女を後ろから抱きしめた。


「あ。服が皺になるんでやめてください」


瑠華はちょっと声を低めて俺の手をつねり、さっさと俺の腕から抜け出していった。


今日の瑠華の冷たさも絶好調!


冷たい瑠華にぞくぞくしながら顔をだらしなく緩める俺。



――――


――


でも会社に行くと、


「あ、神流部長おはようございます。風邪は大丈夫ですか?」と同じフロアの広報二課の女の子。


シャキっ!


「おはよう。昨日休んだらすっかり良くなったよ。心配かけてごめんね」俺は彼女に爽やかすぎるほどの笑顔を向けると、彼女は顔を赤らめて慌てて走っていった。


「二重人格」と隣でぼそっとこぼす瑠華。


なんとでも言って。





隣に愛する君のいる



今日も一日が始まろうとしている―――





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