Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「や。エクステとかじゃないかな~って思って」
瑠華の髪は自毛だ。毎日きちんとお手入れしてんだからな。だから触るンじゃねぇ。
「二村さん」
キーボードを滑らせていた手を休めて、瑠華はちょっとだけ二村を見上げた。
「はい?」
「私が身に纏うものに偽ものなんてありません。全て本物です」
相変わらずの無表情で言い切ると、
瑠華はさっと二村の手を払いのけ、パサッと髪を翻しながら立ち上がり、
資料を抱え颯爽と行ってしまった。
あとに残された俺たち三人…
「「「か……かっこい~!」」」
ん??
俺たち三人は顔を見合わせて、ちょっとびっくりしたように目を丸めた。
いかん、いかん。
こいつらと同レベルとは…
だけど
男の振り払い方までそつがない瑠華に、またもキュンと胸を高鳴らせていると、
「お疲れさま。お取り込み中申し訳ないけど、啓人。ちょっといい?」
と、今度はパーテンションの入り口で綾子がちょいちょいと指を振っていた。
お前のふてぶてしい態度からすると、全然「申し訳ない」と思ってないだろ。
何だよ。次から次へと。