Fahrenheit -華氏- Ⅱ
綾子は腕を組んで、思案げに眉を寄せている。
「裕二と何かあったのか?まさかと思うけど……やっぱりお前……浮気してる??」
話が一段落すると、俺はタバコを灰皿に捨て、何となく話題を変えた。綾子も俺に倣ってタバコを捨てながら、
「なによ、浮気って」
と顔に「はぁ?」と言う表情を浮かべて俺を睨み上げてくる。
少し考えるように目を細めて、やがてはっとなったように目を開き、俺の襟を掴んだ。
「ちょっと!あんた裕二のこと何か知ってるんじゃないでしょうね!」
「はぁ!?」今度はこっちが面食らった。綾子の気迫に押されて、俺はやや引き腰。
「あいつがどーしたよ」
「浮気よ!あいつ最近何か怪しいもの」
「浮気ぃ?知らねーよ。何で怪しいと思ったわけ?」
「最近二人で居るときもしょっちゅう電話が掛かってくるのよ。裕二はその電話にあまり出ないけど、酷いときは2分置きぐらいに!
電話に出てもこそこそとあたしに隠れて話すし」
電話……
で、思い出した。
あいつ、ストーカー問題まだ片付いてないんだな。
「女よ!間違いなく女!!」
と綾子は今にも叫びだしそうにキーっと歯をむき出した。
いや、女には変わりないだろうケドね…
「まぁ俺が言うのもなんだけど、あいつ結構お前に惚れてるぜ?だから浮気とかじゃなく、もう少し信じてやれよ」
俺は眉を下げて綾子を見た。
綾子はそれでも疑わしそうに眉を吊り上げてる。
ま、遊び人二人の言う言葉なんて信じられないと思うケド。
ってか、俺。何であいつのフォローしなきゃなんないわけ?
俺だって自分にいっぱいなのに……
ま、がんばれよ、裕二。