Fahrenheit -華氏- Ⅱ
女が完全に視界から消える頃、
「啓?」
瑠華の声で、はっと我に返った。
「あ、ごめん。ぼぉっとしてた」
「いえ。大丈夫ですか?顔色が悪いですけど…」
瑠華が心配そうに眉を寄せている。
「瑠華ちゃんが一週間も居なくなると、そりゃ顔色も悪くなるさ~」
内心の動揺を悟られないよう、わざとチャラけて言ったけど、カップを取る指先は僅かに震えていた。
「そうですか。ならいいですけど」
って、良くねぇよ!
君が居なけりゃ俺はマジで孤独死だ!!(←だから使い方違うって)
そう、今は捨てた筈の過去をしんみり思い出してる場合じゃない!
瑠華が無事ニューヨークから帰ってくるまで
俺は彼女の無事を祈り続けるしかないのだ。
そう。
あいつとは―――真咲とはもう終わったのだ。
『さよなら』
真咲に向けた最後の言葉は―――果たして彼女に届いただろうか?