Fahrenheit -華氏- Ⅱ
瑠華は涼しい表情を崩さずに腕を組むと、
「何かのプレイですか?それとも罰ゲーム??」と真顔で聞いてくる。
「いえ…プレイでも罰ゲームでもありません。ただ呼んで欲しかっただけDEATH」
だけど断念シマシタ。
ここは社内だし、さっきあんなに気をつけるよう誓ったばかりなのに…
だけど瑠華を目の前にすると、どうしても我儘になっちまう。
まるで駄々をこねるガキだな、俺。
棚の一つに手をついて“反省”のポーズを取っていると、
「ABCD…♪」とABCの歌を口ずさみながら、瑠華まマイペースに棚を見上げてる。
あの、瑠華さん?俺の反省は無視ですか?ホント…マイペース……
確かに棚には資料を分けるスペルが振ってあるけど。
「EFGH~♪」と続けて、瑠華がちらりとこっちを振り返った。
その顔にほんのちょっと笑みを浮かべている。
あれ…?その先って……
「IJ…♪」
“K”と口にしたとき、彼女はさっきの冷たい表情をどこえやら、穏やかな微笑みを浮かべ“K”の棚を指差した。
K―――啓………
「LMN♪」
OPQRSTU……続けて口ずさむその歌声が心地よくて、俺はほんのちょっと顔を伏せ、顔が熱くなるのをごまかすために口を覆った。
瑠華……
すっげぇ好き。