Fahrenheit -華氏- Ⅱ


だけどそんな不安を態度に表したり、口に出したりはしない。


もしそうしたらきっと瑠華が不愉快に思うのは分かりきっている。


だけど瑠華が何を思って、どう行動しているのか分からないから―――最近特に不安になる。


休暇でニューヨークに行ったときもそうだ。


まぁ彼女の家族はあっちに家があるし、友達だって居る。


なのに、一週間のうち俺が彼女の行動を把握していたのは一体どれぐらいなのか。


いつも一緒だったから、安心していたのかもしれないけれど離れたら―――だめだな。


俺が彼女のことを知りたいと思うのは、単なる独占欲なのだろうか。


そんな独占欲がうざいと思われのが怖くて、一歩を踏み出せない俺。


だけど知りたいと思うのは、いけないことなのだろうか。


だめだ。


分かんね。


まともに恋愛してこなかった俺に明確な答えが出せる筈もなく、


考えを打ち消すように、タバコの火も消した。


「まぁあれだ。君ががんばれば、男も君を好きになってくれるって」


大よそ中身のない答えを返し、俺は緑川を見た。


緑川は俯いたまま目だけを上げて、


「柏木補佐は何で部長と付き合ってるんですかね?」


なんて質問を投げかけてきた。





はぁーーー!!?


んなの好きだからに決まってるだろ!


って怒鳴りたかったが、即答できない俺、どうよ……





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