Fahrenheit -華氏- Ⅱ


結局二村たちも俺たちと同じランチを注文し、二人を交えての食事になった。


「瑞野さんはいつも外食?」


会話の端に何となく問いかけると、


「いえっ……私はお弁当です。でもたまたま持ってきてなくて」


と控えめな返事が返ってきた。


「弁当?へぇ、自分で作ってるの?」


「え…?…はい。自分です」


恥ずかしそうに俯いた瑞野さんを見て、俺は素直に感心した。


「へ~若いのにえらいねぇ。いい奥さんになりそうだ」


なんて何気なく言うと、瑞野さんは分かりやすく顔を赤くして益々俯いた。


「神流部長だって彼女のお手製弁当食ってたじゃないですか。前に♪」なんてにやにやした様子で二村の突っ込みが入る。


俺は飲んでいたお冷を危うく吹き出しそうになった。


な、何故それを知ってる―――!!


「え~!?お弁当!?」と緑川も興味津々だ。唯一瑞野さんだけは変わらないテンションで俯いている。


お手製弁当……


ええ…食ってましたよ。


だけどあれは俺が瑠華に頼み込んで作ってもらったんだよ!






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