Fahrenheit -華氏- Ⅱ


真咲と付き合った期間は一年程。


俺にとっては一番長期間とも言える。


出逢ったのは大学一年、18のとき。同じ歳で同じ大学。


学部も違う俺らが何故知り合ったのかというと、


真咲の友人が、俺の連れの知り合いで、何かの拍子に俺の写真を見た彼女から「紹介して欲しい」と頼まれ男2人、女二人で食事をしたのが最初のきっかけだった。


真咲は明るくて、楽しい女だった。


165㎝とスラリと背が高く、姿勢も良ければスタイルもいい。


ついでに言うと、顔も美人だった。


遊びに誘われ、そのとき彼女が居なかった特に断る理由もなかった俺は彼女と何度も会った。


その内になんとなく、俺の方から付き合いを申し出たのだ。


今思えば、向こうだって俺の告白を待っていたに違いない。


「付き合う?」と聞くと、二つ返事でOKが返ってきたのだ。


―――と、それぐらいにしておこう。


これ以上回想すると、嫌なことを思い出しちまう。


俺にとっても、真咲にとっても―――




いいことではある筈がない。





それに今は仕事中だ。


仕事に集中しなければ!


せっかく好調だった成績が落ちて、親父である会長の怒りを買うのも勘弁。


昨年まで在籍していた物流管理本部では、成績不振のため会長室で毎日のように親父から怒鳴られ、酷いときにはノートパソコンを投げつけられた。


ありえねぇっつの!






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