Fahrenheit -華氏- Ⅱ
30分ほどで佐々木が戻ってきた。
どうやら先に佐々木が昼食に入ったようだ。
こちらもしょんぼりとうな垂れている。
「どうしたんだよ」聞いてみると、
「いえ……実は瑞野さんとお昼一緒に…って約束してたんですが、急にダメになっちゃって…」
瑞野さんと?
あれ?だってさっき二村と一緒だったぞ?
瑞野さんが二村をラブ?そんな風には見えなかったけど…
まぁ一方的に二村が連れ出したに違いねぇな。
瑠華みたいに気が強そうにも見えないし、強引に連れて行かれたに違いない。
「どっちにしろあの子は無理だと思うぞ?」うな垂れる佐々木に対して俺は他人事のようにさらりと言った。
「ぼ、僕じゃ分不相応ってことですか!?」
怒ってはいないけど、真剣に意見を求めているようだ。
その気迫に押されながらも、俺は顔を上げてついでに手もあげた。
「いや……あの子たぶん男いるからさぁ」
「男?……え、でもこないだ聞いたときは彼氏いないって……」
「色々突っ込まれたくなくてそう言ったんじゃね?ま、早く次に行け」
俺はわざと明るい声で笑うと、佐々木の肩をバシバシ叩いた。
「そんな簡単に次って言っても、僕は部長みたいにかっこよくないし、お金だって持ってないし…仕事もできるほうじゃないし…」
うじうじいじける佐々木を見て、苛々しながらも、
何か不憫に思っちゃう俺。佐々木が好きだった瑠華は俺が奪ったし、次に好きになった瑞野さんも男が居る。
まぁ……狙うところが高すぎるんだな、きっと…
哀れ佐々木よ。