Fahrenheit -華氏- Ⅱ
男の価値って何で決まるんだろ。
佐々木の言った通りルックス?それとも金?ある程度の地位?仕事が出来るか出来ないか?
俺が以前まで関係していた女たちはどれもそれが目当てだったに違いないけど…
考えたらそれって本当の恋じゃねぇよな。
佐々木は俺から見ても結構いいヤツだ。素直だし、真面目だし、優しいし。
かく言う瑠華も最初は佐々木のこと結構気に入って(?)たっけ。
って言うか、無理やり俺と祐二、佐々木と桐島の中で選ばせただけなんだけど。
それでも瑠華は残りの三人より何より佐々木を選んだ。
結局付き合ったのは俺だけど……
佐々木より俺の方が体温高かったんだよな、きっと。
って、そんなことで勝っても意味がねぇ!
まぁ瑠華みたいに、いつか佐々木のそうゆう本当の姿を好きになってくれる女の子が現れればいいんだが。
それから10分ほどは普通にデスクに向かって、そろそろタバコを吸いたくなった。
席を立ち上がり喫煙ルームに行く途中、階段の奥で陰険村木の声が聞こえた。
ひそひそと、押し殺す声だ。
ゲ
顔をしかめながらも何となく身を隠す。
村木は―――どうやら電話を掛けているようだった。
「だからそれは君に任せるって言ったじゃないか」
押し殺した声を苛々と歪ませている。
ふいに今朝―――綾子との会話を思い出した。
『村木部長と―――二村くんも揃ってその料亭に入っていったらしい』