Fahrenheit -華氏- Ⅱ


あれこれ考えながら喫煙室に行くと、瑠華がすでに中でタバコを吸っていた。その周りに他部署の男連中が彼女を取り巻いている。


しかも独身の若い連中だ。



なっ!!


俺の瑠華に近寄ンじゃねぇ!瑠華は俺の女だっ!


って叫びだしたい気持ちを何とか押さえ、「お疲れ様」と愛想良く笑顔を浮かべた。


「「あ、お疲れ様です」」と男たちも笑顔で答えてくる。


普段関わりあいがないからほとんど会話を交わしたことのない男たちだ。


たぶん瑠華も……


「神流部長は釣りやります?」と会話の流れか一人の男が俺に話題を振ってきた。


「釣り?いや、やりませんね」


「おもしろそうですよ。釣った魚をその場でさばいてくれるんですって」と瑠華が口を挟んだ。


「へ、へぇ…」


何だか瑠華ちょっと…楽しそう??


「女の人って魚好きですよね?柏木補佐は何が好きなんですか?」と違う男がにこにこ。


瑠華は「う~ん、そうですねぇ」なんて可愛らしく首を傾げる……わけでもなく(当然ですよね)


「鯛」と短く答えた。


「鯛?ああ、あっさりしていておいしいですよね♪」と男が必死に会話を繋げる。


若干、どう対応していいのか分からないって感じでたじたじしている。


ふん、瑠華は普通とは違うんだよ。


へっと心の中で笑いながらも、瑠華は俺を見上げてちょっと意味深に笑顔を浮かべた。


「腐っても鯛っていいますからね」







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