Fahrenheit -華氏- Ⅱ


魚の話なんてしてるからかな。なんか旨い魚が食いたくなってきた。


今晩は瑠華の家に泊まる予定であるから一緒に食いに行ってもいいよな。


そう提案すると、


「じゃぁ、くるくる寿司で」と答えが返って来た。


またですか??


瑠華ちゃんはよっぽど回転寿司がお気に召したようで。


「それもいいけど、たまにはうまい煮魚とか食いたいな。運転するから飲めないけど、いい店知ってるんだ。イワナの塩焼きもあるよ?」


あそこならきっと瑠華も気に入るはず。しかもイワナで釣ってみた。


俺は行きつけの小料理屋を思い浮かべる。


瑠華は嫌がらずに「いいですよ」と素直に頷いてくれる。


「ほんと!?じゃぁ仕事終わったら行こうな」


ご機嫌に頷いて、ついでに明日の予定もさりげなく聞いてみる。


「あ…あのさ…明日だけどさ、明日俺昼まで仕事になるだろうけど、午後は空いてるんだけど、君の予定は……」


「明日の予定ですか?」


瑠華はどこからともなくスチャッと手帳を取り出し、それを開いた。


どこまでも隙のない人……


「明日は午前9時から産婦人科に行って、その後はメンタルクリニック。16時に宅配便が届くので、一旦家に帰る予定であります」


スケジュールまで……まったく隙がない。






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