Fahrenheit -華氏- Ⅱ


その病院ツアーは何よ。俺の入り込む隙も色気もねぇ。


それでも俺はおずおずと口にした。


「あの……さ」


瑠華がスケジュール表から目を上げる。


「その産婦人科……ってのはどうしても行かなきゃいけないの?その……薬だっけ?俺、ちゃんとするし……」


そりゃゴムがなけりゃ気持ちいいに決まってるけど…(実際気持ち良いし)でも……


「そのさ…副作用とかやっぱり瑠華の体に負担かけるのは俺いやだし」


瑠華はちょっとまばたきをして俺を見上げてくる。


「副作用……ですか。まぁ血栓症になるのでタバコはあまり吸えないですし、太りやすいってのありますけど、別に有害ではありませんよ。


部長のその申し出はありがたいのですが、元々不規則だった生理をコントロールできるし、生理痛の緩和にもなるので」


「そ、そうなの?」


全く知らなかった…


そうゆう薬があるってのは知ってたけど、単なる避妊目的だけだと思ってたから。


「それを飲まなければ、生理痛は結構酷いの?」


何気なく聞くと、瑠華は「動けなくなるほど辛い」と顔を歪ませた。


あ、でも子供産むと和らぐってのは聞いたことあるけど…


やっぱ個人差なのかなぁ。


俺は極力彼女の子供のことには触れないようにしている。


知りたくないから、とかじゃない。瑠華が娘のことを思い出して悲しい思いをさせるのがいやだったから…







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