Fahrenheit -華氏- Ⅱ
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瑠華の六本木のマンションに到着して、荷物を片付けると、俺たちは例のごとく二人で風呂に入った。
と言っても、ラブい雰囲気はちっともなくて、俺たちは昨日話せなかった一週間分の間を埋めるようひたすらに喋った。
そりゃちょっとは……いや、かなり手が出たけど、瑠華につねられてしゅんと項垂れる。
俺は元気な下半身を宥めるようにひたすら口を動かした。
小さなことから……(俺に起こった大きなことは言えなかったが)、
それでも俺は幸せだった。
体に触れなくても、女と居てこんなに楽しいのははじめてのことだ。
心がひたすらに満たされて、心地良い。
風呂からあがって、パウダールームで瑠華が肌や髪のお手入れをしている間、俺はバスローブを羽織り、頭にバスタオルを被って一人リビングルームに歩いていった。
長湯したから喉がカラカラだ。
綺麗に磨きこまれた鏡に向かって化粧水やらを塗っている瑠華に、
「水貰うね~」と言うと、
「ビール冷えてますよ」と答えが返ってきた。
さっすが!
と思いながらうきうきした足取りでリビングに向かうと、ローテーブルの上に置いた俺の携帯が鮮やかなグリーン色を放って点滅していた。
ギクリ
一瞬、背中が凍った。
慌てて携帯を手に取り、廊下の奥を覗き込んだが、瑠華はパウダールームから出てくる気配がない。
防音の施された室内からは物音が聞こえなかったが、あの様子じゃしばらく出てこないだろう。
俺は意を決して携帯を開いた。