Fahrenheit -華氏- Ⅱ
じー…
思い切り不審そうに瑠華が見つめてくる。
「あ、あはは!間違えた!」わざと明るく言ってその場をしのぎ、それでも瑠華は変に俺を疑っている。
それでもシャワーを浴びて私服に着替えると、俺は元来の調子を取り戻し、化粧をしている瑠華に纏わりついては鬱陶しがられた。
邪険にされながらもにこにこしてる俺を見て、瑠華もどこか納得がいったのかそれ以上深くは突っ込んでこなかった。
瑠華の病院の予約時間を見計らって俺は彼女を産婦人科まで乗せて行き、その足で会社に行った。
二、三残っている案件を片付けたら、今度は彼女をメンタルクリニックにまで迎えにいくつもりだ。
8階のフロアに行くと、隣の物流事業部では二村がすでに仕事をしていた。
二村一人…陰険村木は居ない。
またこいつかよ。
うんざりしながらも俺はヤツに気付かれないようこそこそっと自分のブースに向かったが、
「あれ?神流部長じゃないですか~」
と、気付かれた。
「部長も休日出勤ですか?でも私服…ははぁ。さてはこの後デートですね」
だったら何だって言うんだよ。
そう言い返したいも、言い返すとそれ以上に深入りされそうだったからやめた。
俺は曖昧に頷いて、自分のブースに足を運んでせかせかとパソコンの電源を入れた。
二村にかまってる余裕は俺にはねぇ。
そんな思いで立ち上げのパスワードを入力していると、パーテーションの影からひょっこり二村が顔を出した。
「彼女とラブラブですか~?」
いい加減うんざりしながら、
「お前暇なの?」と聞いていた。