Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「俺が瑠華のハンドになってあげる~♪」なんて言って指を動かし、彼女の膝や肩でちょこちょこしていると、
「変なところばかり触ってくるいやらしいハンドはいりません」って振り払われた。
そんな風に邪険にされてる俺……悲しいな。
でも……
瑠華が“ハンド”が欲しいって言ったから、彼女の肩に手が見えたんだ。
それも瑠華用に映画でのあんなごつい手じゃなく、赤ちゃんのちっちゃい手を。
―――……って、説得力なさすぎ。
自分で考えてて悲しくなっちゃったよ…
大体アダムス一家は不幸や邪悪な事忌まわしい物を好むが、これは悪意、悪気があるわけではなく、単に暮らしや育ち方が先祖代々根本からずれているためでだからだ。
でもさっきの赤ん坊の手は―――……。
あからさまな悪意と……そして
警告を促しているようにしか思えなかった。
それ以上深入りするな。
じゃないとただじゃ済まさないぞ―――
誰とも分からない謎な声が聞こえてくるようで、俺は少しだけ身震いした。
一刻も早く……その問題を片付けるべきである。
それなのに、その術(すべ)を俺は見出せなかった。
病院の支払いを済ませて外で食事を取ると、その後はまっすぐ瑠華のマンションに二人して帰った。
ニューヨークから送ったと言う国際荷物もきっちり時間通り届いて、時間はゆるやかに、だが確実に過ぎていった。
夜がやってきて、俺は二台ある携帯の二台とも電源を切った。
真咲からの連絡を気にしたくなかった。
眠る前には通常より多い量のアルコールを体に入れ、瑠華を抱きしめて眠った。
そのお陰で夢も見ずに眠ることはできたが、次の日は二日酔いで体がだるかった。
「飲みすぎです」なんて瑠華には怒られたけど、それでも休みだったし「たまにはいいか」と言いながら、めずらしく一日彼女の部屋でだらだらと過ごした。
その日も携帯の電源は入れずに、
月曜日を迎えた。