Fahrenheit -華氏- Ⅱ


休憩のために食堂に足を運んだけれど、食欲なんて湧かず、結局インスタントコーヒー並みに薄いコーヒーを飲んで、食堂の喫煙スペースに移動した。


ガラスの扉を開けるまで気付かなかった。


陰険村木が壁に寄りかかって、ぼんやりとタバコを吹かせているのを目撃して





俺はその場を回れ右したくなった。


だがその前にばっちり村木と視線が合ってしまった。ここで部屋を出るのも逃げてると思われそうだ。それはそれでムカツクから、俺はしぶしぶ灰皿の前に移動した。


「お疲れ様です」村木がぶすりと挨拶して俺も、

「どーも」とぶっきらぼうに返した。



相変わらず不健康そうな顔で、ちっともうまくなさそうに村木はタバコを吹かせている。


っていうかこいつってタバコ吸ってったけ??


どうでもいいけど。あーあ…村木と二人きりなんて最悪なパターンだぜ。


そう思いながらも俺はタバコを取り出した。


そのときだった。


ガチャ


またも誰かが入ってくる気配がして、俺が顔をあげると、俺はちょっと救われように苦笑いを浮かべた。


こっちもどこかやつれた感じの裕二が力なく手をあげる。


「よ」


「お疲れさん」


顔だけじゃない、声にも力がなくて裕二はふらふらと俺の隣に移動してきた。





< 266 / 572 >

この作品をシェア

pagetop