Fahrenheit -華氏- Ⅱ
休憩のために食堂に足を運んだけれど、食欲なんて湧かず、結局インスタントコーヒー並みに薄いコーヒーを飲んで、食堂の喫煙スペースに移動した。
ガラスの扉を開けるまで気付かなかった。
陰険村木が壁に寄りかかって、ぼんやりとタバコを吹かせているのを目撃して
ゲ
俺はその場を回れ右したくなった。
だがその前にばっちり村木と視線が合ってしまった。ここで部屋を出るのも逃げてると思われそうだ。それはそれでムカツクから、俺はしぶしぶ灰皿の前に移動した。
「お疲れ様です」村木がぶすりと挨拶して俺も、
「どーも」とぶっきらぼうに返した。
相変わらず不健康そうな顔で、ちっともうまくなさそうに村木はタバコを吹かせている。
っていうかこいつってタバコ吸ってったけ??
どうでもいいけど。あーあ…村木と二人きりなんて最悪なパターンだぜ。
そう思いながらも俺はタバコを取り出した。
そのときだった。
ガチャ
またも誰かが入ってくる気配がして、俺が顔をあげると、俺はちょっと救われように苦笑いを浮かべた。
こっちもどこかやつれた感じの裕二が力なく手をあげる。
「よ」
「お疲れさん」
顔だけじゃない、声にも力がなくて裕二はふらふらと俺の隣に移動してきた。