Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「ど…どうって…?」
緑川は分かりやすく顔を赤らめた。
こいつに迫るなんて不本意だが、契約の為いたしかたない。
「つい最近好きな奴できたって言ってただろ?」
「ええ…まぁ」
「そいつとはうまくいってるの?」
追い討ちをかけるように緑川の顔を覗き込むと、緑川は潤んだ目で俺を見上げてきた。
「妬きもちですか?」
その問いには答えないでいた。
何て言ったってこいつの行動は予測不可能!
何をしてくるか分かったもんじゃないからな。
俺が何も答えないでいると、緑川はちょっと唇を尖らせた。
「からかってるんですか?部長の方こそどうなんです?柏木補佐とはうまくいってるんですか?」
そう―――こいつは俺と瑠華が付き合っていることを知っている。
ってか、バレた。
俺は緑川にさらに顔を近づけた。
顔と顔が接近して、吐息を感じれるほどの距離だ。
マスカラで伸ばした濃い睫を瞬かせ、緑川は俺を見ると覚悟したようにぎゅっと目を閉じた。
正直、俺も限界―――