Fahrenheit -華氏- Ⅱ
A4サイズの紙で、真咲がさっき見ていた資料の一部だろうと思った。
どうせまた近いうち打ち合わせするんだ。
それ以前にあいつから何か言ってくるかもしれない。
そのときまで取っておくか…そんなつもりで用紙を拾い上げ―――
俺は目を開いた。
黒字で書かれた三文字。
“婚姻届”
慌ててその書類を食い入るように見つめると、
“夫になる人”の欄に『菅井 正臣(スガイ マサオミ)』
“妻になる人”の欄には―――
『真咲 満羽(マサキ ミツバ)』
と書かれていた。
どうゆうことだ―――……
俺は目を開いて、上から下へと視線を這わせる。
その婚姻届には生年月日から本籍地まできちんと書き込んである。
一番下の届出人の名前も記入してあるが、菅井さんの方の印鑑は押してあるのに対して、真咲の分はまだだった。
もう一度書類の上に視線をやると、届出の日付の欄もまだ未記入だ。
あの二人は―――やっぱり恋人同士だったわけか………