Fahrenheit -華氏- Ⅱ
『まあね。とりあえずあんたはケイトを慰めてあげなさいな。男なんて優しく撫で撫でしたらknockout(イチコロ)よ』
そんな単純なものかしら……
そう思ったけれど口には出さずに、ちょっと苦笑いをして
「Right.(分かった)アドバイスありがと。もうそろそろ時間なの。また電話する」それだけ返した。
『OK.bye♪』
「Bye」短く返事をしてあたしは通話を切った。
携帯を閉じて、ちょっと吐息をつく。
別に心音が言ったからとかじゃないけど―――
あたしはやっぱり様子のおかしい啓のことが気になって、今日は彼のマンションに泊りに行こうと決めた。
フロアに戻って、ちょっとだけ啓の様子を伺うようにパーテーションを覗き込むと、
彼は電話中だった。
「発注納期と在庫数を教えてください。型番は※アメリカA3011、トーキョーT1874、ドイツD6007…」
…………
「―――え…?あ!そうです!デンマークD!!ドイツはGermanyですよね。D6997です!失礼しました」
※一部の業界で使用している符号です。アルファベットって聞き取りづらいですもんね。ちなみに私たちはジャイアンツGって使ってます。変わってますよね。ドイツDはありがちな間違い(●´艸`)
「本国(アメリカ)在庫2本…?輸入4日…ですか。手配かけてください」
…………
「え??四週間?あ、はい!すみません」
啓は電話の向こうの見えない相手に向かってぺこぺこ頭を下げている。
やっぱり……変…
あたしは電話を終えた彼のデスクから、彼が今まで見ていた書類を取り上げた。