Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「But if nobody gets damaged now, what he said is right.(でもこれで誰も傷つかないのであれば、ある意味麻野さんの言っていることは正しいってことですよね)」
What a pain.(何か納得いかないけど)と続けて、顎を引くと瑠華は俺の背中を軽く叩く。
「Well, give it your all.More power to you.(ま、がんばってください。健闘を祈ってます)」
全然応援されてない相変わらずの無表情で言われて、それでも半分は自業自得みたいなところがあるから、もうやるしかねぇだろ。
「Ha… What a pain.(はぁ。めんどくせぇ)」
盛大にため息を吐きながら俺は布団を引き上げた。
俺のすぐ隣で瑠華も目を閉じたようだった。
すぐ近く……彼女の体は俺が手を伸ばさなくても届く距離で、裕二が乱入してこなきゃ今頃……
考えてがくりとうな垂れる。
それでもちょっと頭を動かすと、瑠華の横顔が目に入り、自然に手が伸びた。
最初は枕の上に流れる髪を触ったりなんかしてた。瑠華もそれほど気にしてないのか、気付いているだろうけど、無視。
その内に俺のイケナイ手は彼女の胸元を這っていく。
瑠華は軽く咳払いをして俺の手を軽くつね上げ、そして眉を吊り上げると寝室の扉に視線を向けた。
「Mh'm, What's in your mind!?(何を考えているんですか)」
声をひそめるように咎めて、俺を軽く睨む。
「I'm awfully sorry .(はい。すみません)」
叱られて、俺はしゅんとうな垂れると枕に顔を埋めた。
瑠華はごそごそと音を立てると、布団を肩まで掛けなおし向こうをむいちゃったし。
くすん。啓人くん寂しい…
だってだって、すぐ近くに瑠華ちゃんが居たんだもん。
そりゃちょっかい…(内容はちょっかいどころじゃないが)出したくなるじゃん。
裕二のヤツめ!
この夜の借りは倍返しで返してもらうからなっ!