Fahrenheit -華氏- Ⅱ
そのすぐ後に瑞野さんも自分のフロアに帰って行き、俺たちまで気まずい雰囲気でパソコンに向かう。
と言っても気まずいのは俺と佐々木だけで、瑠華は平然としていた。
って言うか淡々としてる?
「びっくりしたな…村木次長(今は部長だけどね)もあんなに怒らなくてもいいじゃないですかね…」
佐々木がこそっと俺に喋りかけてくる。
「そうだよなぁ。仮にも緑川は副社長の娘だし?それにしても容赦ないな」
「そう言う意味ではあの方もプライドを持って仕事してるってことでしょう。副社長の娘だからと甘やかさずに」
瑠華が口を挟んできて、俺と佐々木が同時に顔を上げた。
「…あれ?…柏木さんは村木の味方?珍しいね、嫌ってなかったっけ?」
でも緑川のこともあんまり好いてなさそうだから、どっちもどっち??
探るように目を上げると、
「好きじゃありませんよ。でもミスをしたのは明らかに緑川さんで、それを叱るのは上司として当然じゃありませんか?」
とめくっていた資料から目を離さず淡々と言ってのける。
てか冷たい。
「ついでに言うと、あなたの教育ミスでもありますね」
グサッ
………俺にも冷たい。
まぁ確かに先月まで緑川は俺の下に居たのは事実だし、ついでに言うとあいつには最初から期待してなかった分、こっちも叱ることはしなかった。
はぁ
瑠華って時々ホントに冷たい。
特に仕事が絡むとなると、血も涙もないオンナだ。
まぁ変な馴れ合いがないからいいといっちゃいいだろうけど。
それでも瑠華のこうゆう所―――俺はちょっと苦手だ。