Fahrenheit -華氏- Ⅱ



―――――

――


あれから10分ほど経って……今は俺と瑠華、それから何とか落ち着いた緑川とアロマルージュに来ていた。


ここなら会社がそう近くないし、社員も来ないだろうと言うことで移動したってわけだ。


出てくるとき、電話で瑠華と緑川と食事に行ってくると言うと、佐々木には「急に決めないで下さいよ!」と叱られるし…


俺、昨日の夜から災難続きじゃね??


それでもまだ涙が引っ込まないのか、緑川はぐすぐす言って瑠華のハンカチを握り締めていた。


「で?彼氏とどーしたの。浮気?」


「部長」と瑠華に咎められたが、どうせ聞くんだし妙な遠回りはせずにストレートに聞く方がいいだろ。


「……浮気…じゃないです…。でも…浮気…みたいなもの…」


「それは浮気なのですか。そうじゃないのですか」


と瑠華。


キミだってストレートじゃねぇかよ。思わず目で突っ込んだが、瑠華は俺の視線をシカト。


くっ……手ごわい女だぜ…


「…す、好きな人が…わ、忘れられないみたいで…」


「あー…何か前に言ってたよな。でも付き合ってるのは君なんだろ?堂々といればいいじゃん」


「…そのつもりだったんですけど……二人…仲良さそうにしてるの見ると…楽しそうにしてるの見ると……どうしようもなく不安に…な、なって…」


「その、彼の好きな人って言うのは緑川さんも知っている方なんですか?」


瑠華が運ばれてきたアイスティーを飲みながら聞くと、緑川はおずおずと顔を上げた。


俺はちょうどコーヒーカップの取っ手を持ち、コーヒーを飲もうとしていたとき。






「知ってるもなにも、お二人も知ってる人です。



あたしの彼は二村くんで、二村くんの好きな人は瑞野さんだから」







カップを持つ俺の指から力が抜け、


同じように瑠華もストローを口から離していた。






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