Fahrenheit -華氏- Ⅱ
俺は瑠華から借りたライターでタバコに火をつけた。
女ものの小さなライターだったけど、シュボッと火をつけると
ファーレンハイトの香りが漂ってきた。
俺と瑠華が一つになった気がして、嬉しいのと、そして持ち主がいない寂しさを同時に感じた。
偶然にも彼女とお揃いの携帯を取り出し、迷わず瑠華のメモリを開いて電話を掛ける。
TRRR…
二回のコール音で、相手に繋がった。
『はい』
相変わらずそっけないけど、聞き慣れた声を聞いて安心できた。
でも声が遠い。
俺と瑠華との間にある距離を感じる。
東京とニューヨーク―――とぉいな……
たった十数時間しか離れてなかったっていうだけなのに、妙に懐かしく思う。
「瑠華ちゃん♪着いた~?」
前置きも何もなしに俺は聞いた。
『ええ。丁度今。荷物を受け取ったところです』
おお!ナイスタイミング!
「これからどこ行くの?」
『グリニッジに。友達のアパートがあるんですよ』
「と、友達って…」
瑠華がクスっと電話の向こうで笑みを漏らした。
なんだか見透かされてる…
『女性ですよ。それも日本人。ハイスクール時代の友達です』
「そうなんだぁ」
分かりやすくほっと安堵する俺。
そう言えば俺、瑠華の友達の話ってあんまり聞いたことねぇな。