Fahrenheit -華氏- Ⅱ



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――


「プランAってのは分かったけど、他に作戦は?プランBってのはないの?」


例の如く、俺たちは食事を終えた後、胃が落ち着いた頃合を見計らって―――向かい合ってバスタブに浸かっていた。


泡を立てて、外国のお風呂みたいだ。


化粧を落とした素のままで、瑠華は俺の目をまっすぐに見つめてきて、


「プランBは―――」と言いかけた。


「プランBは?」


ドキドキしながら聞き返すと、


「ありません」なんてあっさり返事が。


ガクリとうな垂れるも、


「そもそもプランBと言うものは、Aがうまくいかなかった場合のバックアップに用意される作戦です。最初からそんな弱気では、プランA自体うまくいきませんよ?」


瑠華はちょっと笑って、俺の頬を撫でた。


泡のついた白い手が俺の頬を滑るようになぞる。


「う~ん♪なるほどねぇ」


幸せそうに目を細めるも、その強気発言にドキドキ。


瑠華は恋愛にはとことん弱い。


迷ったり悩んだり、後ろ向きになったりするけど、


仕事が少しでも絡むと、一歩も引かない。


そのアンバランスなところが可愛いし、完璧でないはないことに親近感を覚える。


同時に彼女を助けてあげたいと思うし、俺も彼女に助けて欲しいとも思う。





こうゆうのを―――支えあってるって言うのかな。






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