Fahrenheit -華氏- Ⅱ
* Side Ruka *
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いつからだったか、10月31日の夜は、特別な夜になった。
最初は、そうね。パパの職場のパーティーで。あたしがまだ10歳にもなってなかったとき。
ママが用意してくれた魔女のコスチュームを着て、「Trick or Treat」 と言ってパパのお友達を回ると、みんなにこにこしながらお菓子をくれたわ。
目や口の形にくりぬいたカボチャのランプに、Duck Apple(リンゴ食べ競争)。
みんな笑顔でおふざけをし、いつも以上にはしゃいでた。
それが楽しかったの。
――――
彼―――マックス・ヴァレンタインと二人きりで喋ったのも、いつかのハロウィンパーティー。
あたしがファーレンハイトを起業したばかりの歳、18で、彼は当時21だった。
「ルカ!」
イーストリバーに面したヴァレンタインの別荘を貸しきっての若者向けのパーティー。
当時マックスの兄、ジョシュアと恋人同士だった心音があたしをこのパーティーに呼んでくれた。
あたしはこうゆう華々しいところが苦手だったし、何より自分と世界が違うお金持ちばかりのセレブばかりを相手に、何を話していいか分からなかった。
それでもしつこく誘ってくる心音に根負けして、来ることに決めた。
広い会場の奥から心音が両手を広げて、あたしを迎えてくれる。
胸が大きく開いた黒のドレス。変わったデザインで裾がくもの巣みたいに洒落た(?)ものだった。
「I'm so glad you could make it!(嬉しいわ♪)来てくれたのね」
「あんなにしつこく誘われたらね…」
あたしは苦笑を漏らして肩をすくめた。
「ヴァレンタインのパーティーよ?顔を売っておいて損はないわ。ところで、Ah……あんたは何の仮装?普通に見えるんだけど」
心音はあたしの姿を見て、目を細めた。
あたしは高校のプロムで着た深いネイビー色のドレス。オフショルダーになっていて、裾はふんわりとしたドレスだった。
「急だもの。何も用意してなかったの。でも昔使ってた斧は持ってきたわよ」
あたしが血のりつきの斧を取り出すと、
「Wow…Terrific!(ワォ…最高!♪)」と心音は鼻を鳴らし、
あたしたちは抱き合って、頬にキスをし合った。