Fahrenheit -華氏- Ⅱ


「Ruka,I'm so glad you could make it.(ルカ、来てくれて嬉しいな)」


まるでエメラルドのような透き通るグリーンの綺麗な瞳に、あたしの頬が少しだけ上昇した。


「Who are you cosplaying as?(あんたたち二人は何の仮装?)」


と心音が聞いて、マックスとジョシュアは二人で顔を見合わせた。


「The Ripper.(切り裂きジャック)」とジョシュアがにこやかに答え、


マックスは「I'm James Moriarty.(モリアーティー教授だ)」


と優しいけど色っぽい笑みを湛えた。


「「Have you?(君は?)」」


二人に聞かれて、あたしはちょっと肩をすくめた。


「I'm killer.(殺人鬼よ)」


彼らはまばたきをして、またも二人顔を見合わせ、あたしは後ろに持っていた血のりつきの斧を取り出した。


「「Wow!」」


二人が楽しそうに驚いて、「Great!(イイね!)」マックスが色っぽく笑みを浮かべる。


その笑顔に、またもあたしの体温が上昇するのを感じた。


「あんたが※コナン・ドイルを好きだってマックスに言っておいたの」
※モリアーティー教授は、探偵ホームズの宿敵で、ドイルの作品の名悪役です。


心音が楽しそうに言って、あたしは顔をしかめた。思わず


「心音!」と声を大きくする。


「ふふっ♪楽しんでいって。Joshu,let's go.(ジョシュ、行きましょ♪)」


心音は小さくウィンクを寄越して、ジョシュアの腕を取り賑やかな群れに向かっていった。


その場に残されたあたしは心音を呆然と見送り、マックスは不思議そうに目を細めていた。


「What did she say?(ココは何て?)」


「Er…nothing much.(えぇっと……何でもないわ」


あたしは苦笑い。


心音はマックスがあたしのことを気に入っていたって言ったけど、どうかしら。



だって彼は通り過ぎる女だったら誰でも―――振り返るようなステキな人。




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