Fahrenheit -華氏- Ⅱ
また夢を見る―――
飽きもせずに、過去の夢を……
闇の中―――俺がポケットに手を突っ込んで見下ろした先に、真咲の後ろ姿がぼんやりと浮かんでいた。
彼女は背を丸めて地面に屈み込んで、手探りで地面に手を這わせ、何かを必死に探しているようだった。
「探し物か?」
俺が聞くと、真咲がうつろな表情で振り返った。
もしかしてあの婚姻届―――?だったら俺が持ってるぜ?
なんて言い出そうとすると、真咲はすっと立ち上がった。
「探し物は見つかったわ」
真咲が妖艶に微笑んで、俺の胸の前をすっと指差す。
その指先を見つめていると、
「探し物はあなた」
無言で真咲を見つめ返すと、俺は息を呑んだ。
真咲は真っ白な白無垢に身を包み―――白塗りした顔に赤い紅を引いた口で微笑んでいたからだ。
「ねぇ約束したでしょう?あたしと結婚するって。
ほら。あなたとの子供も居るのよ」
いつの間にか真咲の腕の中に白い布に包まれた何か小さなものが身動きして、かすかに動いた。
俺は無言で首を横に振った。
こめかみに嫌な汗が浮かぶ。
「あら、忘れちゃったの?
あたしたちの子供よ」
真咲が白い布を取り払い、そこにあったのは―――手のひらに乗るような小さな
胎児の姿だった。