Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「部長、甘いものはお好きですか?」
瑞野さんが両手を差し伸べて、僅かに首を傾ける。
瑠華にちょっと雰囲気が似てるから、瑠華がこんな可愛らしい仕草をしてると考えると…
キュン♪
と胸が鳴る。
が、瑠華がこんな可愛いことをするはずがない↓↓
「マドレーヌ、どうぞ」
差し出された両手の上に、マドレーヌのパッケージが乗っていた。
いつか会長室の廊下での出来事を思い出す。
でも、何故に今になってマドレーヌ??
「あ、ありがとう」
それでも俺はそのマドレーヌを受け取って、何となく開封すると
封の開いたパッケージからふわりと甘い香りが香ってきた。
覚えのある香り―――
だけどこの香り……もっと間近で感じたことがある。
「部長、好きです」
瑞野さんがふわりと微笑んで、
え―――………?
俺は目を瞬いた。