Fahrenheit -華氏- Ⅱ

遡ること4時間ほど前―――



東京、六本木の高級タワーマンション。


4705室。





―――彼女の朝は早い。


ベッドから起きだすと、コーヒーを飲みながらタバコを口にする。


ニュースを流しながら、新聞二紙に目を通し、タバコを吸い終えると


シャワーを浴びる。


いつも抜かりなくきっちりメイクと、長い髪をふんわり巻いてセットして




―――今日は俺の眠る寝室を覗きにきた。





「啓。朝ですよ」


ゆさゆさと、ふわふわの羽毛布団の上から俺の体を揺する。


俺はちょっと目をこじ開けると寝起きの視界に、まさに女神と言える極上の女が映る。


猫みたいな大きな目に、白い肌。すっと通った鼻筋に、淡い色を浮かべたちょっと薄い唇。


どれもが完璧に整っている。


つまりは超!俺好みってわけ♪


窓から侵入する朝日がきらきらと彼女を取り巻いていてなんとも幻想的。


俺は幸せそうに口元を緩めた。


「起きてください。朝ですよ」


無表情に言って、俺をさらにゆさゆさと揺すった。


「ん~…チューしてくれたら起きるぅ」


甘えてみた。


だけど


「一生そこで寝ていてください」


むぎゅっと布団を俺の顔に押し付けると彼女は立ち上がり、部屋から出て行ってしまった。




そうです。俺の彼女




柏木 瑠華は





いわゆるツンデレ。




って言うか、あの人デレあるの?って疑いたくなるぐらい、俺に冷たい(泣)






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