Fahrenheit -華氏- Ⅱ


同じようにこっちを振り返った二村は、俺を見るなり慌てて瑠華から離れた。


逃げるように自分のブースに帰っていく二村の背中に向かって、


「二度と近づくんじゃねぇぞ!」なんてガン垂れていると


瑠華は「やっと開放された」と言う感じでのんびりコピー機の吐き出し口から書類を取り出している。


「ちょうど良かった。部長にご相談があるのですが」


「はいはい♪何でしょーか??」


「以前にもリゾート権等を扱った案件はあったのでしょうか。あったのなら、資料を見たいのですが、探したところどこにもなくて」


「リゾート権ねぇ……」


う~ん…俺は首を捻って考えた。


リゾート開発の案件ではないが、以前企業の小さな保養所については扱ったことがある。


会社が経営難で保養所を手放そうと言う事だったが、なかなか良い物件で建物も真新しかったし、おまけに土地付きだった。


その権利を他企業に譲渡したいということで、不動産会社を通さずにうちに持ちかけてきたのは、売値が破格だったからだ。


まぁ傾きかけている会社にとって、その保養所が少しでも高く売れれば多少の足しになると踏んだのであろう。


不動産会社では話にならないと言う事で、うちが買い手を見つけた。


そのことを瑠華に話し聞かせると、


「その資料どこにありますか?」と聞いてきた。


瑠華はまだ桂林のリゾート開発の権利についてのオークションにこだわっているようだ。


それほど大規模なオークションではなさそうだったのに、どうしてそんな風にこだわるのか、ちょっと不思議だった。


「どこって、あるんなら資料室かなぁ」


「さっき探したんですけど、それらしいものは見当たりませんでした。もう一度一緒に見てくれます?」


Yes!!


「はい、はい!!もちろん♪♪」


俺は二つ返事でOKした。




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