Fahrenheit -華氏- Ⅱ


それでもめげないもんね!


「やってよ」


ねだるように甘えてみたが、瑠華は見事にスルー。


く!柏木 瑠華め!!


今まで俺のおねだり攻撃にやられなかった女は一人も居ないってのに。


「ここにも無いんですよね」


と、俺の意見を無視して資料探しに夢中。


仕方がないので、俺は瑠華の髪に直接触れた。


幸いにも資料室だし。ここには俺たち二人しか居ない。


それを良いことに、俺は瑠華の髪を勝手にまとめた。


「部長、セクハラです。勝手に私の髪に触れないで下さい」


後ろも振り返らず淡々と言いのける瑠華に俺はちょっと悲しかったり。


でもいいもんね。慣れてるし。


「セクシュアルハラスメントとは……」


ぶつぶつ…瑠華が口の中で唱えていたが、「うん、うん」と俺は瑠華節を軽~く流して聞いてるフリ。


その合間に「不快な思いをしたの?」なんて聞いてみたが、


「………」


瑠華からは返事が返ってこなかった。


否定しようよ!そこ!!


それでもめげずに瑠華の髪をいじっていると、


バタン!


予告もなしに、資料室の扉が開いた。


ドッキーン!慌てて手を離そうとしたものの、俺の小鳥のような心臓(←自分で言う?)はびくびく縮まって、その場で固まってしまった。


「啓人~!直ったぜー」


能天気なバカ裕二の声が聞こえ


ゆ、裕二で良かったーーー!


じゃなくて!


何でこのタイミングで現れるんだよ!


「丁度良かった。麻野さん、セクハラ現場の証人になってください」


ぇえ!!?





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