Fahrenheit -華氏- Ⅱ
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「聞きましたよ~、神流部長の甘い声♪」
二村はにこにこして、俺に近づいてきた。
あ、甘い声ぇ??
「彼女ですか??ねぇ彼女ですよね♪」
と、二村はそれこそ犬のように纏わり付いてくる。
「あの口調からだと、本命とみた♪」
二村はにやりと笑って顎に手を置いた。
「俺には本命しかいねぇよ」
前は違ったケド…
「ふぅん」
二村は含みのある顔で、俺を見上げてくる。
何だぁ??俺は若干顎を引いた。
こいつは俺より10㎝ほど低い。佐々木と同じぐらいか。ホント仔犬って感じだな。
「その甘いルックスに低い声。神流部長モテるでしょ?かなり派手に遊んでそうだ」
唐突に二村が聞いてきた。ってか失礼な奴だな。
ま、あながち外れてはいないけど。
こいつが何を考えてるかさっぱりだ。
「まぁ否定はせんが」
「はぁあ~。いいなぁ。卑怯ですよ。そんな何でも揃ってるのに、その目」
「目?」
「珍しい色の目ですよね。左右違うのがプレミア付きそうだ」
二村はにこにこ笑って、タバコを取り出した。
仔犬のような大きな目の際に、人懐っこそうな皺が入る。
う~ん…
親しみやすさと、可愛さではこいつの方が勝る気がする…