Fahrenheit -華氏- Ⅱ
一個ずつ……
目の前の問題を一つずつ解決していかなければ。
後回し、後回しにしてきた問題たちと向き合わなければ何も解決していかない。
あれこれ考えながら仕事をして、俺はとりあえず片付け易い問題から取り組むことに決めた。
デスクの横にあるホワイトボードの予定表に書き込んでいる最中。
『神流:18時から第二会議室にて打ち』…
“合わせ”と書こうとしているときだった。
「ねぇねぇ柏木さ~ん。俺今から休憩なんだ♪一緒にお茶でもしようよ」
と、性懲りもなく二村が瑠華を外へ誘い出そうとしていた。
今は18時少し前で、あと数分で定時と言うところだ。
多忙な物流管理本部で、休憩がこの時間まで延びることは多々あるし、それについては何も突っ込まない。
が、しかし!
そこで何故瑠華を誘う!!
ちなみに佐々木は席を外している。総務課に事務用品の発注を依頼しに行っているわけで、二村はその隙を狙ってきているに違いない。
だが俺が居るからな。
お前の好きにはさせない。
「二村、いい加減しつこいぞ。柏木さん嫌がってるのが分からないのか」
俺がいつになく厳しく問いかけると、
「え~?そうには見えないけど」と二村はへこたれない。
瑠華をちらりと見ると、無表情にパソコンに向っていて二村をまるで相手にしていなかった。
嫌がってはいなさそうだが、その存在すら無視したいと言う様にひたすらに手を動かせている。
だけど、画面に向う真剣な表情が、このときばかり少しだけ曇っていた。