Fahrenheit -華氏- Ⅱ



迷惑そう……と言うよりも具合が悪そうだ。


さっきまで元気そう(?)だったのに。


「しつこい。食事ぐらい一人で行け」


助け舟のつもりで二村を睨むと、


「え~だって一人で食事って寂しいじゃん」


と二村が口を尖らせる。


「ガキか。柏木さんだって忙しいんだよ。お前の勝手に振り回すな。しかも他部署だろ」


ちょっと声を低めて真剣に怒ると、


「柏木さんも気分転換が必要かな~って思って」と口ごたえをしてくる。


どうやら二村は何がなんでも瑠華を誘い出したいようだ。


そうはさせるかっての。


「二村、お前何で柏木さんをしつこく誘うんだ。お前が声を掛けりゃ他の部署でいくらでもついてきてくれる社員が居るだろ?」


例えば緑川とか、或いは瑞野さんとか。


「やだな~部長、そんなの決まってるじゃないですかぁ。俺柏木さんとお近づきになりたいんですよ」


いけしゃあしゃあと言ってのけた二村の言葉に、俺と瑠華は同じタイミングで顔を合わせた。


俺たちは二村の裏の顔を知ってるからな。


緑川を弄び、瑞野さんを追い掛け回し、その上瑠華も狙ってる?




「ふざけるのも大概にしてください」




瑠華が声を低めて、二村を少し強い視線で睨み上げた。


ぅうわ。完全に怒ってるよこれ…


「二村、お前もう帰れ。邪魔だ。ってか張り紙見えなかったのかよ。お前の無駄にでっかい目はだてか?」


マジ喧嘩が勃発しそうだったから俺は慌てた。


ぞんざいな仕草で、本気で鬱陶しそうにしっしと手で二村を払うと、二村はその大きな人懐っこそうな目をぱちぱちさせて、


「張り紙?ああ、見ました。


お二人が本気で怖いので今日のところはこれで~~


柏木さん、ハロウィンパーティー楽しみにしてるよ♪」


チュッと投げキッスをして二村が帰っていく。



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