Fahrenheit -華氏- Ⅱ
思った以上に強烈な女だな。
桐島の言葉で大人しく帰っていったのが不思議だ。
そう思うと、俺じゃなく桐島の方が適役では??と思う俺。
あいつは万人受けする(イケメン)爽やか営業マンだからな。
しかしあの爽やかな顔とは裏腹に、かなりちゃっかりしてるし。俺の十倍以上の金額をせしめて、悪意のない顔で演技し通すタイプだな。
桐島じゃなくてクロシマだ、あいつぁ。
「桐島に代わってもらっかな」
何気なく言うと、
「お前の方がまし」と裕二が本気で俺の腕を掴んだ。
こいつもクロシマの性格知り尽くしてんな~
ま、高級中華料理店董蘭(トウラン)につれてけって言われてるしな、あれこれ経費(?)を考えて俺の方が安くあがったわけだ。
感謝しろよ!裕二(怒)
と、言うわけで裕二をストーカーしている女の対策の布石はできた。
はいっ次っ!!
てな具合でいそいそと会議室から出ようとしているとき、
ヴーヴー…
スーツの胸ポケットで俺の携帯が震えた。
嫌な予感がして携帯を取り出すと、
メール受信:瑠華
になっていてひとまずほっ。
しかし、内容が全然「ほっ」じゃない。
“トラブル発生”
短い一文に俺はクラリと眩暈を起こしそうになった。