Fahrenheit -華氏- Ⅱ
瑠華は俺の問いかけに無言で頷き、またもマウスに手を伸ばした。
すぐに俺のパソコンにメールの内容が転送される。
つまりはこうだ。
瑠華<断りのメール>→緑川<それについての返事>→瑠華→俺<緑川のメールの転送内容>
と、若干ややこしいがこうゆう感じで今メールが俺たちの間をぐるぐる回っている。
人のメールを無断で転送するなんて、瑠華だってやりたくないだろう。
だけど敢えて瑠華から転送してくるってことは、彼女も何か『いやな予感』ってのを薄々感じ取っているのだろう。
その内容は自分だけでは処理するには難しい、そう判断したに違いない。
俺はそんなことを考えながら黙ってメールを開いた。
“少しでいいのでお時間とっていただけないでしょうか。どうしても柏木補佐に相談したいことがあって。
二村くんのことが絡んでいるのですが”
やっぱり―――……
半分予想していたことだった。瑠華もそうだろう。だから彼女は俺に転送してきたってわけだ。
俺は額を押さえながらもマウスに手を伸ばした。
“話しの内容をさりげなく聞いてくれないか。俺も同席が可能かどうかも聞いてほしい”
俺のメールを読んで瑠華が素早くメールを作成している。
佐々木がコピーから戻ってきた頃、またも緑川のメールの返事が俺に転送されてきた。
「物流管理部、忙しそうですね。緑川さんが残業なんて…」
と佐々木がのんびり言って俺に書類を手渡してきた。
「明日は雨だな。雨、雨」
俺はてきとーに流しながらも、転送されてきたメールを開いた。