Fahrenheit -華氏- Ⅱ
パソコンのメールをじっと眺めていると、
「……あの」
佐々木が遠慮がちに声を掛けてきた。
俺が顔を上げると、佐々木は怪訝そうな顔で、
「そんなに難しいメールしてるんですか?」
と聞いてくる。
「へ!?いや!これはその…」
「まさか部長、社内メールを利用して女性社員を口説いてるんじゃないでしょうね」
佐々木が怪訝な表情をはっきりと疑わしそうに変えて俺をちょっと睨む。
語尾に「瑞野さんとか」とブツブツ付け加えて。
誰が!
瑞野さんをメールで口説くってんだよ!俺ぁ瑠華一筋だ!!
「てか俺が真面目にパソコンに向かってるのに、お前は何でそんな想像しかできないんだよ!」
「普段の不真面目さが物語っているのです。部長は何をするにもオーバーリアクションなので、大したことで悩まれているわけではないです。
なので佐々木さんが気に病まれることはないですよ」
「…確かにそうですね」
…瑠華。ナイスフォロー。
と言いたいところだが、
不真面目!!オーバーリアクション!
それって瑠華サンが普段から思ってることですよね!
そして佐々木、瑠華の説明に納得しちゃった??
ってことは俺は普段から不真面目でオーバーリアクション……
ああ、二人にそんな風に思われていたなんて。激しく凹むぜ。
今度からはもっとクールにキリっといかねば。