Fahrenheit -華氏- Ⅱ
二村はタバコを挟んだままの口をぽかんと開けて「か…」と何かを言いかけた。
なんだよ。どうせくだらないことだろう。
そう思って背を向ける。
「かっこいーーー!!!」
思わずズルッと滑りそうになった。
どこがっ!!
ってか、まぁ冗談だろうけど。
いまいち掴めないヤツ。
――――
――
可愛い(?)後輩からは「かっこいい」なんて言われたけど、
同期の前だと素、全開な俺。
「寂しい、寂しい、寂しい」を連発し、
テーブルに突っ伏しては
「瑠華、瑠華ちゃん、瑠華ぁ~(泣)」と彼女の名前を連呼。
そんな俺に思い切りドン引きの同期三人。
秘書課の綾子に、その恋人であるシステムの裕二、それから外食事業部の桐島 宏明(キリシマ ヒロアキ)。
三人とも同じ本社勤務だが、三人とも俺と瑠華の関係を知っている。
「啓人の本気モード、ウザっ」と裕二がジーマを飲みながら鬱陶しそうに目を細め、
「あらぁ、あんたもこんな感じよ」と綾子。
テーブルに臥せっている俺の頭を桐島は撫で撫で。
「男からの慰めなんていらねぇよ。どうせなら可愛い女の子がいい」
「魂。洩れてるよ」
うぉ!そいつぁいけねぇ!!戻さねばっ!