Fahrenheit -華氏- Ⅱ
俺はほとんど何も言わず瑠華を車体に押し付けるよう迫ると、彼女の唇に
口付けを落とした。
一度めのキスで驚いた瑠華が口付けを拒むように俺の体を押しのける。
それでも俺は彼女の顎を掴み、再びキスをした―――
やがて瑠華も諦めたのか、俺を押し戻そうとしていた手を胸元から首へとそっと移動させる。
俺は車体に手をついて、小さな瑠華を囲むように口付けを落とし、
やがて瑠華の手は俺の背中へと回ってきた。
きゅっとシャツを握られて、少しだけ背伸びをする瑠華。
ついばむようなキスを繰り返し、
唇を離すと
「「………」」
二人して無言で見つめ…いや、瑠華の場合は「こんなところでしないでください」と睨んでいるのか、
誰も通りかからなかったけど、俺も公衆の面前でキスをしたことが急に恥ずかしくなって
「と、とりあえず中に入ろうか」
「……そうですね」
俺に同意しながら瑠華は大人しく助手席に座った。
俺も車に入り込んだはいいが
この後どうしよう…
いまいち格好がつかない俺。
こうゆうときアメリカだったら、路チューだって全然平気だろうし、マックスだったらもっとスマートにあれこれ行動するんだろうな。
考えて、一瞬でも過ぎった自分の暗い考えにうな垂れる。
とにかく店を探さなきゃ。
さっきの店に戻るのもキマヅ過ぎるし、かといって今から他の店を探すのも…
そう思って顔を上げると、コインパーキングの壁が目に入り
“前向き駐車でお願いします”
と看板に書かれていた。