Fahrenheit -華氏- Ⅱ
くすっ
瑠華が小さく笑い、俺の手にそっと触れた。
相変わらず冷たい―――指先だった。
顔を上げると瑠華は眉を下げて、ぎこちなく笑みを浮かべながら
「啓のせいじゃありません。
謝らないでください。
The one to blame is son of a bitch.
(悪いのはあのピーXXXです)」
瑠華は眉をしかめて吐き捨てるように言った。
瑠華……またもこんな真昼間から読者の皆様にお聞かせできない放送禁止用語を…
よっぽど裕二に腹が立ってるとみえる。
「あなたにあたった部分もあります。ごめんなさい」
瑠華は俺の頬をそっと手で包み、俺は驚きながらもその手を握り返した。
本当はそれだけの理由じゃないはず。
本当は真咲とのことを聞きたかったはず。
何故真咲の番号が俺のプライベート用の携帯に入っていたのか。
本当は何もかも喋って楽になりたかった。
でもそれじゃ
解決にならない気がした。
俺は喋って楽になるかもしれないけど、瑠華は―――
俺の荷物を彼女に渡して…俺は楽になるかもしれないけど、でも渡された彼女が背負うんだ。
そんなことを考えて、俺はゆっくり首を振った。
そんなこと
させられない。