Fahrenheit -華氏- Ⅱ
って、そんなことどーでもいいっつの!!
会社の近くの割りとカジュアルなダーツバー。気軽な雰囲気で、多少騒いでもOKな場所だ。
もっか同期同士のたまり場みたいになってる。
今日も金曜日と言うことで、店内は賑わっていた。
「でも意外だな。お前がこんなに柏木さんにハマルなんて。あの遊び人が」
と裕二が、にやりと笑みを浮かべてメガネのブリッジをちょっと直した。
「うっせぇ。視力そう悪くもないくせに!いかにもインテリ風情なメガネつけやがって!このメガネっ子!」
「はぁ!!俺に当たるなよな!この、遊び人!!」
「誰が遊び人だっ!!お前だって一緒じゃねぇかよ!」
こいつとはいっつもこんな感じ。いっつもくだらないことで言い合いをする仲。
キャンキャン吠えてると、
「あーっ!!もぅ!こんなところで喧嘩は止めてよね!」と綾子が仲裁に入った。
桐島はマイペースにキューバリバーに口をつけている。
しかもあさっての方を見てるし。
お前こそ大丈夫かよ桐島。魂洩れてんじゃねぇか?
お~~い、桐島ぁ、戻ってこ~い
ってな具合だ。
たった四人の同期だってのに、何かまとまりねぇな俺たち…
「そういやさ、マリちゃんどう?まだ赤ちゃん生まれない?」
俺は気を取り直して、ジンリッキーのグラスに口を付けると、この集まりで唯一既婚者である隣の席の桐島を見た。