Fahrenheit -華氏- Ⅱ
瑠華はまるで俺を挑発するかのように目と口角を上げる。
こいつめ~、俺が歌の意味まで知らないと思ってやがるなっ。
「I have a mind to…
俺が今したいことは
In One.
(たった一つ)」
俺は人差し指を立てると、瑠華は
「Aha?(ふーん?)」
と意地悪っぽく笑って聞いてきた。
俺はギアを入れ替えると、メインストリートから外れて脇道に入った。
細い一通の道路が続いていて、この先に小さな公園がある。
その公園の木の下に車を停め、シートベルトも外して、わずかに助手席の方に身を乗り出すと、
「It's time to kiss and make up.
(君にキスして仲直りだ)」
そう言って、本当の意味での路駐…もとい路チュー。
こんなんで仲直りとか、
安い感じがしたけど
でも高価なものを贈ってもきっと瑠華は喜ばない。
実際試されてるのかどうかなんて分からないけど、
俺が欲しいもの。
君が欲しいもの。
それはきっと信頼と安心なんじゃないかな。
俺は君を裏切るつもりはないし、したくない。
ありったけの愛情を込めて
彼女にキスをした。